未来の坊主のたわごと

1992年生。お坊さん見習いやってます。

みんなに知ってほしい仏教哲学_vol.2

前回に引き続き、みんなに知ってほしい仏教哲学を紹介します。
今回は、仏教の中心となる思想を3つほど取り上げながら、仏教的な人生観について考えたいと思います。

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自燈明(自灯明)

意味:自らを拠り所として生きなさい。

個性が尊重され価値観が複雑化した現代で、たくさんの名言、ノウハウ、生き方、働き方が紹介されています。

自分の軸とは何なのかと模索し、社会的に成功したと人たちの生き方を参考に自分の価値観を上塗りしていくと、新たな自分に生まれ変わったような感覚を得られるかもしれません。ですが、その新しい価値観とは異なった価値観にまた出会ってしまったとき、つまり自分の生き方(働き方、キャリアプラン...)に価値を見出していない人と出会うと、自分の生き方は間違っているのではないかという焦りを覚えてしまいます。


自分の生き方を人まかせにしないこと。

死ぬその瞬間までどう生きるべきかを自分で考えて自分の責任で歩んでいく強さを持つこと。これが自燈明が説く人生観です。
自分はどうあるべきか分からなければ、人の意見に耳を傾けることも1つのヒントでしょう。

それでもその意見を取り入れるべきか否かは自分の責任ですから、自分の生き方を人に委ねず自分で決断することが大切です。だからこそ何が正しくて何が間違っているのか、自分でしっかり見極めなさいというメッセージです。前回紹介した聞思修のスタイルを重要視する所以はここにあるんだと思います。

ちなみにこの教えは、釈迦が弟子たちに対して死の間際に遺した言葉として伝えられています。

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如実知見

意味:あるがまま(客観的な事実)を観察し、対象物の本当の姿を正しく見極めること。

僕らが意識すべきものの見方のことで、前回紹介した正見とほぼ同義です。
この文脈で紹介したかったので再度紹介することにしたんですが、
<何が正しくて何が間違っているのか>という点について、
ものの良し悪しは個人の価値観に左右されるので置いとくとして、客観的な事実をただ観察することが何よりも大切です。

例えばですけど、人生にはいろんなライフイベントがあるかとます。就職、結婚、出産、定年、葬儀など。
こういったイベントに対する僕らの考え方っていうのは、その地域の文化や時代の習慣に色濃く影響を受けます。

妊娠した後に結婚することを「できちゃった婚」と呼称していたのが「授かり婚」と呼ぶように変わったようですが、
それを「貞操観念の崩壊だ」と批判する人もいれば、「子どもが結婚するきっかけを作ってくれたなんて素敵ね〜」と感じる人もいるでしょう。

場所や時代の変化に伴って規範も変わるでしょうから、
固定観念に縛られているともったいない人生を歩んでしまうことになります。

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縁起(因縁生起)

意味:結果あるところに原因があり、原因あるところに結果がある。

「縁起をかつぐ」とか「ご縁」でおなじみのこの言葉。

ものごとを客観的に見ていくと、必ずそこに「原因」と「結果」の法則が存在します。
もうこれは信仰とかそういうのを置いといて、自然界における普遍的な法則って言ってもいいと思うんですけど、そのことを言ってるわけなんですよね。
それで、原因には2種類あって、直接的な原因と間接的な原因(条件)があいまって結果に至るんですが、仏教ではその関係性を正しく観察しろ、と。

例えば職場とかで、誰かに対して
ま、誰でもいいんですけど、「は?」ってなるとするじゃないですか。
その「はー?」という気持ち(結果)が生じるのにも原因があって(当たり前ですけど)、
大抵、自分が予想(あるいは期待)していたのと異なる返答 / 態度が帰ってきたとき「は?」ってなりますよね。

予想(期待)通りにいかなかった原因を探っていくと、自分の伝え方が不十分なために互いの認識にズレがあったり、そもそもお互いの(考え方や取り組み方の)前提が違ってたりすると思うんですけど、

で、その縁起をさらに自分の内側に向けてみると、繰り返しになりますが、
「本来であればこうなって当然」という自分の期待 / 予想が心の中にあって、それが「は?」というストレスを生み出していることに気づきます。

もちろん他人に期待しないということを勧めているわけじゃなくて、チームで仕事をする人にとって、人との関係性無くして仕事を進めることはできないので、お互いの理解が一致するまでコミュニケーションをする努力が必要になるんだろうと思うんですけど、家族や友達との人間関係みたく、結果を追い求めない人付き合いであれば、自分の感情の原因は、目の前の出来事(事実)に対する自分の解釈(期待)であることを意識しておくといいかもしれません。


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