未来の坊主のたわごと

1992年生。お坊さん見習いやってます。

芝居に馴染みのなかった僕が、芝居を観て思ったこと

先日、久しぶりに芝居を見てきました。

もともと芝居は僕にとってあまり身近なものではなくて、これまで数えるほどしか見たことがありません。初めて観に行ったのも仲のいい友達がきっかけでした。
僕は映画が好きで映画館にはよく足を運ぶけど、芝居は映画と違って目の前で役者の方々が演じている。特に小さな会場では観客と演者の方との距離が近く、脚本によって作られた一種の虚構の世界と観客として自分が存在しているリアルの世界が曖昧。初めて芝居を観たとき、その非日常的な感覚に驚いて興奮したことを今でも覚えています。

鑑賞の仕方は人それぞれ。だから自分がどうやって芝居を見ているのかを意識してみると、少しだけ自分のことが分かるような気がします。

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例えば。

芝居を観ていると「ん?今のどういう意味だ?」と違和感を感じたり、「なんだこれ?」とそもそも理解すらできないシーンを目の当たりにすることがあります。それは自分の知識不足からなのか、あるいは僕が芝居慣れしてないからなのか。もしくは、それが僕には未踏の高尚なエンターテイメントなのか。「他のお客さんは今の分かってんの?」。鑑賞中、そんなことが頭をよぎったりする。

けれど、いつだっただろう。以前芝居を観に行ったとき、たまたま大学時代の友達に遭遇したことがあった。終演後、雑談的に感想をしゃべり合っていたとき、ふと、自分の鑑賞の仕方が他と違っていることに気づいた。何も自分が特殊だというわけじゃない。芝居の受け取り方は、ひとそれぞれ違うのだという当たり前の事実に、初めて気づいたのです。

大人になるまで芝居に馴染みのなかった僕にとっておもしろさとは、芝居に込められたメッセージに対する共感の度合いとわかりやすさが満足度のほとんどだった。たぶん表現の世界にいる人が身近じゃなかったから、そんな変な思い込みを持っていたのだと思う。表現する人はまず自分の中に伝えたいことがあって、それを言葉にして整理する。それを演劇やダンスのように表現へと昇華させて、観客たちの元へ届ける。つまり鑑賞とは表現を楽しみつつも、その表現を解体してそこに潜むメッセージを組み立て直す作業が求められると思っていた。エンタメをクソ真面目に捉えていた。

そこには、当然訴えたいなんらかのメッセージを作り手は芝居に込めていると(もちろん無意識に)考えていて、それをどれだけ読み取れるか、そこに共感できるか。その指標が自分にとっていい鑑賞体験かどうかの1つの目安でした。つまり、そのメッセージを「正確」に読み取れるか、作り手の意図をちゃんと受け取れるかは、僕にとって大事なことでした。だからそのメッセージが曖昧だったりすると、たとえそれがどんなに面白い芝居であっても消化不良になってしまう。そこで体験し感じたことをどうしても言葉で整理したいと思ってしまう。

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でも、なぜそう考えていたのだろう。僕は、人と話したり、芝居や何かの表現を観たりすることで「あぁ、そんな考え方もあるのか」と視野が広がる感覚が大好きだ。もんもんと1人で考えていては到底たどり着くことのできない見方に触れることで、自分がさらに自由になった気がするからだ。

作り手の意図に寄り添おうとせず自分なりに解釈しても、自分の思考の枠を超えられるような経験をしたことがない。それほどに自分の固定観念の強さには自負がある。だから表現する人の力を借りて、自分を無意識に縛っていた固定観念が姿を表すことに快感を覚えるのかもしれません。これは以前書いた、自由の旨味を知ったときの自分の原体験に端を発しているのかもしれません。


そんな僕でしたが、その姿勢で芝居と向き合うのは(さすがに)ちょっと偏った態度だったなと感じるようになりました。
今回観たお芝居は、一本の物語の中に、実にたくさんの世界が階層的に共存しているものでした。現実と虚構が入り混じる90分のあのお芝居は、作り手のメッセージがどうとか考える暇もなく、終始圧倒され続けた。それは単に、言葉で整理できていないだけなのかもしれない。でも言葉に整理して分かったつもりになって、何かを見落としてしまうのもなんか嫌だ。

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今回芝居を観ていた他の観客がこんな感想をTwitterに綴っていた。

初めて演劇というものを観て、わからない部分もたくさんあったけど面白かった。今の私たちの周りはテレビやYouTubeなど、"わかりやすい"ものに溢れていて、"わからない"ものに触れる機会に乏しいと思うのだが、わからないものをわからないまま受け入れるにはどうしたらいいのか。


なるほどなー。
これを読んで「分からないもの」を分からないからこそ考え続け、その意味をときどき更新していければいいなと思った。

今回の芝居の感想は、またどこかで書きたい。